が、明日から京都やら神戸やらに3泊4日の修学旅行へ参りますので、まだ次回更新の目処が立ちません。申し訳ないのですが今しばらくお待ちください…!
その代わりというわけでもないのですが、突発的に無双の周泰(贋者注意報発令)で小話をば。
(エンパ、トリップ君主設定)
「…痛い、ですか」
痛くないわけがない、という言葉は直前で飲み込んだ。
「…いえ…」
本当に、と問われて頷けば、そんなはずはないと呟いて少女は更に顔を痛ましげに顰めた。
…どう対応すればいいのか分からない。
「……俺の言葉は…信を得るに値しないのですか……」
「そ、そういうわけじゃなくて」
戦を終えて陣へ戻ると、迎える君主の表情はいつも優れない。そのことについて進言するつもりは毛頭ないが、やはり、どうせならば笑顔で迎えて欲しいものだ、と周泰は密かに思っていた。―――悔いることも、恥じることもない戦いだったはずだ。なのに、このような顔をされる理由が周泰には分からない。
「……何故、そのようなお顔をなさいますか……」
「え?」
「俺の働きは―――…未だ、貴女様のお心には適わない…と」
その言葉に勢いよく首を横に振った。少女は身長差を埋めようと体をぴんと伸ばし、首を目一杯持ち上げて周泰を見つめている。周泰は、その場に膝をついた。
今度は自分よりも幾分下の位置になった周泰の目をじっと見て、その視線を先の戦で負った腕の傷へと向ける。手当てにと宛がわれた布が赤く染まっている様を見て、目を伏せた。
「…戦わないで、なんて…そんなこと言える状況でも、立場でもないと分かってます。でも、戦えば、怪我をします。それが過ぎれば―――…どんなに強くたって、死んで、しまう」
自分よりとてもとても小さい君主は、悲しそうに唇を噛む。
「幼平は…貴方達は私の為に戦うと言うけれど、私は…貴方達が死んでしまうことは、嫌です。考えると―――とても怖い、です」
―――切り捨てるべき部下の死を厭うこの君は、過ぎるほどに優しい。
この動乱の世に似つかわしくない存在だと思う。しかしそれと同時に、空に浮かぶ太陽へ対する憧憬にも似た、崇拝に近い感情を周泰に抱かせることも事実だった。
臣の中にはこの少女を甘いと言い捨てる者もいる。他国の者は臆病だと彼女を謗る。
それを咎めだてるつもりはなかった。その通りだと思うときもある。…だが、そればかりではないとも知っている。
自然に口元に浮かぶ笑みもそのまま、周泰は言った。
「ならば…お命じください」
「…命じる?」
「はい」
貴女が死ねというのならば、すぐにでもこの命を絶とうと既に誓った。だから、今度は
「…貴女様が『生きよ』と仰る限り…この周幼平、如何なる死地からも必ず帰還すると、お誓い申し上げます」
大きく見開いた目を、唇を引き結ぶと同時に細める。その表情は国主たるに相応しく、小さな体が相応以上に見えるほどに威風堂々としていた。
「なら…命じます。幼平、生きなさい―――如何なる死地へ赴こうと、如何なる傷を負おうとも、その心が私の許にある限り…生きて、此処へ帰りなさい。必ず」
「………御意」
少女は、戦うなとは決して言わない。戦わねば護れないと分かっているからだ。
少女は、護るなとは決して言わない。己が分をわきまえているからだ。
しかし少女は―――死ぬなと言う。それは矛盾だ。それは嘗てないほどの恣意。だ
だが、周泰はそれをただ気高く思うだけであった。彼女を護ることが出来ることを喜びとし、その許で戦い生きるられることを幸いと思うばかりだ。
―――どのような理不尽でも構わない。望むものは、全て叶えたいと願う。
「…じゃあ、典医の所へ行きましょう。ちゃんと手当てしないと、痕が残ってしまうから」
「いえ…」
どうして、と眉根を寄せる君主に言う。
「体の傷は…戦いの記憶を留めます。同時に―――…俺が、貴女様のために生きていたのだという、揺ぎ無い証にもなります…」
目を丸くして周泰を見ていた少女は、やがて顔を真っ赤に染めた。馬鹿なことを言ってないで早く行きましょう、と腕を引かれて立ち上がる。周泰は赤く染まった耳を眺めながら、自分は馬鹿なことだとは思っていないのだが、と心の中で呟いた。
好きなものはゲーム(特にRPG,SRPG)、漫画(ジャンプ系)、映画(邦画より洋画)。オヤジ好きで声フェチ。
最近は悟りを開き、趣味をオープンにしてます。