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ANIMO Blog

よしなしごとを、そこはかとなく書きつくる。

2024'05.13.Mon
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2012'11.30.Fri
海賊王に、おれはなる!

…と、いついかなる時も小気味よくハキハキと宣言できるルフィに憧れます。
そんなわけで、実習記録の合間にルフィの話が書きあがったので晒させていただきます。短編習作。

海と能力者の話。実はこういうことだったらなんかいいなぁという妄想。

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青が、広がっている。

透けるような青から、鮮明な青、深みへ繋がる重い青。ゆるやかなグラデーションをなす青に魅せられながら、下へと向かう。
青に飲まれようとする赤―――そこへ向けて手を伸ばした。赤が沈むスピードに、指先が追いつけない。足をばたつかせて更に深く。
指が赤に触れた瞬間、それを絡め取るようにしっかりと握りしめ、引き寄せる。腕に感じる確かな重みに安堵を感じながら、光を目指して浮上した。



「―――ぶ、はっ!!」

やっと海面に出たと同時に、肺に残っていた空気を思い切り吐き出し、その反動で胸いっぱいに空気を吸い込む。海水が気管に少し入ってむせてしまったが、咳込みすらしない抱えた人物の方がまずい。慌てて縄梯子をのぼり船に上がる。船べりを越え、少し乱暴に甲板へ体を落とせば、ごほ、とひとつ咳をして海水を吐き出した。ほっと息を吐き、自分もべしゃりと甲板に横たわる。

「はっ…なん、…もー、なにやってんの…」

ごほごほと咳込む船長に力なく呟き、これ見よがしに溜息を吐く。丸めていた体を仰向けに、ぐんと伸びをしてルフィは笑った。

「いやー、行けると思ったんだけどなー」
「…まあ、止めろとは言わないけど…せめて浜辺とか、遠浅の海でやるとかさ」

んー、と気のない返事が返る。これはまたチャレンジしやがる可能性あるな、と思わず苦笑を浮かべた。まあ、好奇心と冒険心の塊のようなこの男に何を言っても仕方がないことは重々承知だ。
泳げないことなど自分自身が一番わかっているのに海を恐れず、どころか愛し、風を帆に受け海を渡るような馬鹿な男なのだから。今さら、おぼれる可能性があるから船上でおとなしくしろ、なんて聞くはずもない。
大の字に寝る船長を横目に、立ち上がると船べりに腰かけた。首を振り向ければどこまでも続く青い海。美しい水平線。
能力者が一度身を浸せば捕え、その奥底へと飲み込もうとする母なる恐ろしき海。

「…私、さっき思ったんだけど」
「ん?」

いつの間にか起き上がっていたルフィが、隣に並んで座る。決して太くはない船縁に胡坐をかいて海を向くルフィに、この男には恐怖心とか学習能力はないのかと少し呆れた。けれどこの態度はおそらく、彼が何より海を愛し、許しているゆえなのだろう。ひどい片思いね、といつかナミが笑っていたけれど―――。

「海は能力者を忌み嫌う、っていうけど。逆の可能性もあるんじゃないのかなって」
「なんだ、どういう意味だ?」
「―――好き過ぎて、溺れさせちゃってる可能性もあるんじゃないかってこと」

ルフィは腕を組み、間抜けな顔で首をかしげた。思わず笑う。

「なに言ってんだ、お前?」
「だから、好きだからどんどん自分の中に引きこんじゃって、結果溺れさせてるというか…」
「?」
「あー…えーとね」

この男に、こういう感情の機微(というほどでもないが)を解せというのもちょっと難しいだろうか。でも、ここで話を切りあげてしまうのも気持ちが悪いし、例えを探してみた。

「ルフィは肉が好きでしょ」
「ああ! 肉はうまいぞーいくらでも食える!」
「で。たとえば、その肉が他の誰かにとられそうになる」
「肉は渡さん!!」
「うん。―――そういうことじゃないかな、って」

そう言えば、ルフィはきょとんと目を丸くした。
まだうまく伝わらなかっただろうか。ちょっと不安になって言葉を足そうとするが、その前に彼は海を見つめて笑った。心底嬉しそうに。けれど静かに。

「…そうか。そうなら、いいな!」

ちょっとびっくりしてしまった。そんなにも真摯に受け止めてくれるなんて思っていなかったし、ルフィのことだから「よくわからん!」とでも言ってスパッと話を切り上げてしまうのではないかと。
海賊王を目指すこの男が、どれほどこの広い青を愛しんでいるのかを改めて知った気がした。なんだか胸がすくようでいて、どこか―――ちりちりともする。

「…ほんとに、今のたとえで分かったのかなー」

海に向けられた視線を戻したくて、疑うようにそう声をかける。するとルフィの視線は思惑通りこちらに戻った。少しムッとしたような彼は、ちゃんと分かった、と口をとがらせる。その幼さに小さく笑うと、ぬっと腕がこちらへ伸ばされた。驚いて身を引く間もなく、抱き込まれて一緒に甲板へ落下する。…膝を打った。

「いったー…な、なにするのいきなり」
「こういうことだろ?」

は?と思って至近距離にあるルフィの顔を見る。にしし、と無邪気な笑顔のルフィは、しっかりと抱く腕を緩めないまま言った。
わけわかんない、とルフィの赤いベストに額を押し付けて呟く。ルフィは「お前バカだなー」と笑った。お前だけには言われたくない、と行き場に困る手で脇腹をつねったけれど、無暗に伸びるだけだった。


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お馬鹿な君にも解りやすく

お題サイト 「それでは、これにて」様より
 

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自己紹介:
関東圏在住の看護学生。
好きなものはゲーム(特にRPG,SRPG)、漫画(ジャンプ系)、映画(邦画より洋画)。オヤジ好きで声フェチ。
最近は悟りを開き、趣味をオープンにしてます。
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