2012'11.19.Mon
どうも、絶賛実習中のモノクロです。
素敵な短編が書けるようになりたいです。
というわけで、短編習作。
唐突にティキ(Dグレ)相手。連載主ではない。たぶん。
雰囲気だけの習作ですが、お読みいただける方は、続きからどうぞ!
素敵な短編が書けるようになりたいです。
というわけで、短編習作。
唐突にティキ(Dグレ)相手。連載主ではない。たぶん。
雰囲気だけの習作ですが、お読みいただける方は、続きからどうぞ!
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カーテンの隙間から差し込む日が覚醒を促す。
うーん、と眉を顰めながら目を開き、のっそりと体を起こした。あくびをひとつ。ベッドからおりて、裸足でぺたぺたと床を叩いて洗面台に向かった。
蛇口をひねって出てきた水で手を洗い、その手で水をうけ、顔を洗う。まだ寝ぼけ気味だった頭が段々と冴えてきた。ばしゃばしゃと何度か繰り返すうち、耳にかけていた髪の毛が前に落ちてくる。うっとおしく思いそれを再びかけようとすると、後ろから代わりにそれをしてくれる手があった。
そのまま、髪の毛をおさえてくれている手に笑い、あと何度か顔を洗う。
「はい」
「ありがとう」
差し出されたタオルで顔を拭き、目を開ければ思った通りの顔があった。
「来てたんですね、ティキさん」
「今さっきな。おはよう」
濡れて張り付いた前髪を指先で払って額に口づける。そのくすぐったさに身をよじりながら朝の挨拶を返した。
「朝ごはん、食べてきました?」
「んーん。作ってくれる?」
もちろん、と答えた唇に小さくキスが落とされる。もう、とむくれた頬が愛らしくてそこへも唇を寄せれば、おとなしく座っててください、と照れた顔で叱責にもならぬ叱責が下された。ティキは肩をすくめてリビングに向かう。
キッチンに向かい、さて何を作ろうかと食材を確認する。先日、ティキが色々と持ち込んでくれたからなんでもあるといえばあるが、あまり待たせてしまうのも悪いし、何より自分もおなかがへっていた。
短時間で作れる簡単なものを、と結局オーブントースターで温めたバケットとスクランブルエッグ、軽く火を通したソーセージにコーヒーというありきたりな朝食を出せば、それでもティキは嬉しそうに笑って平らげた。
「うまい」
「…全部、ちょっと火を通したくらいですよ」
「それでも、オレのために用意してくれたってだけで十分」
にこにこと笑みを浮かべ、テーブルに肘をつき、まだ食事の終わらないこちらをじっと見つめてくる。優しげに細められた目がこそばゆい。幸せだなぁと思うと、コーヒーすらも甘くなる気がした。我ながら単純である。
朝食を終えて二人分の食器を流しで洗っていると、退屈だったのかティキもキッチンに入ってきた。肩に顎を乗せて後ろから手元を覗き込み、まだ? と聞いてくる。
「まだ、です」
「折角オレが来たのに。相手してくんねぇと、拗ねちゃうよ?」
彼が顎で肩をぐりぐりする度、癖のある毛が頬をくすぐった。
「…よく言います。自分なんて、次はいつ来るとも言ってくれないで、いつも気まぐれで」
「守れない約束はしねぇ主義なの」
「はあ」
これ見よがしに溜息を吐いて見せると、ティキの腕がにゅっと前に伸びる。蛇口をひねって水を止められ、びっくりして振り返ると同時に手の中の皿が取り上げられた。
「あ」
「没収。で、お前はこっち」
ひょいと肩に担ぎあげられて、さっさと朝起き出てきたベッドに逆戻り。嘘でしょう、と言う間もなく薄く笑った唇が呼吸ごと言葉を奪った。顔中に、耳元に、首筋に、喉に、鎖骨に。段々と下へ降りていくキスにわずかな抵抗を示すけれど、結局最後は彼に求められるままになってしまうんだ。そんなこと、自分が一番わかっている。
「っは、」
「抵抗しねぇの?」
「………」
答えの代わりに背中に腕を回して抱きしめ返せば、ティキが嬉しそうに喉を鳴らして笑った。
「これ、前言ってたやつ」
「え? …あっ」
もうお昼じゃないか、ごはんどうしよう…。なんて考えていると、目の前でちらちらと何かを振られた。しゃらしゃらと微かに音がする、砂の入った小瓶。手を伸ばせばかわされる。むっと眉を寄せるとティキは笑い、しっかりと手に握らせてくれた。
話の中で、ちょっと「欲しいな」と言っただけなのに、まさか本当に持ってきてくれるなんて。嬉しくなって、寝転がったまま瓶をかざして砂を眺める。
「砂なんて見て、楽しいもんかね」
「ただの砂じゃありません。星の形をしているんです」
「知ってるよ、持ってきたのはオレなんだから」
でもそれってなんかの死骸なんだろ? と風情のないことを言われた。けれど上機嫌は落ち込まない。
それでも綺麗じゃないですか、とにこにこ笑う横顔に目を細め、ティキは後ろから抱きしめる腕の力を強めてむき出しの肩に顔をうずめた。
「な。他にも欲しいもん、ある?」
「どうしたんですか、急に」
「どうも。なんかある?」
いいえ。首を振って、頬を彼の頭に寄せる。
窓の外からは光が差し込む。この部屋には食料も、着替えも、本も、楽器も、画材も、星の砂も、欲しいと思うものは既にすべてあった。白い壁に白い天井。目にまぶしいけれど、黒の彼を映えさせるこの部屋が好きだった。いつ来るともしれない彼をはっきりと見せる、この白い部屋が。
どうした、と聞く彼の頭を両手で抱き込んで、胸元に捕える。名前を呼ぶ声を直接肌に刻み込んで目を閉じた。
「もう、なにもいりません。だから、もっとここへ来てください」
「…かわいいこと言ってくれちゃって」
そう言うけれど、いいよ、とは言ってくれない。守れない約束はしない主義なのだから仕方がない。
「あなたには、きっとわからないんでしょうね」
呟けば、ティキの体がぴくりと反応した。
そう、きっとわかっていない。どれほど私が恐れているか。気まぐれに訪れるあなたが、もしかしたらもう来ないのではないかと一人震える夜を。
あなたは知らない。私がどれだけ、あなたに焦がれているのかを。
「…お前だって、きっとわかってないよ」
呟き、ティキが柔肌に噛みついた。そこから広がる痛みですら愛しい。
「あいしています」
涙が出そうな想いで告げる。ティキが顔を上げた。
「あいしています」
「オレも、あいしてる」
だからはなさないよ。お前を逃がさない。
まじないのように繰り返して顎先に口付け、目を伏せる。触れる肌から感じる互いのぬくもりだけに意識を向けた。こんなにも近い。こんなにも。けれど、どうして胸は満たされない。
入り口もなく、出口もない。あなたしか訪れることの出来ないこの部屋で、私は独り、あなたにただ焦がれ続ける。
「あいして、います」
言葉で縛れたらいい。言葉で全て伝わればいい。私が逃げることを恐れるあなたに、あなたさえいればこの牢獄でさえ楽園に勝るのだと教えられたならいいのに。
そう願いながら何度も囁くけれど、きっと彼には届かない。それがもどかしくもあるけれど、このすれ違いがある限り、きっとあなたは私に執着し続けて、この何もかもある牢獄を与え続けてくれるのだと思うと、そんな一生もいいのかもしれないと思えた。
きっと、私もすでに狂っているんだろう。可笑しくなって笑うと、噛みつくようなキスが降ってきた。
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ビン詰めにされた世界が私のすべて
お題サイト 「それでは、これにて」様より
カーテンの隙間から差し込む日が覚醒を促す。
うーん、と眉を顰めながら目を開き、のっそりと体を起こした。あくびをひとつ。ベッドからおりて、裸足でぺたぺたと床を叩いて洗面台に向かった。
蛇口をひねって出てきた水で手を洗い、その手で水をうけ、顔を洗う。まだ寝ぼけ気味だった頭が段々と冴えてきた。ばしゃばしゃと何度か繰り返すうち、耳にかけていた髪の毛が前に落ちてくる。うっとおしく思いそれを再びかけようとすると、後ろから代わりにそれをしてくれる手があった。
そのまま、髪の毛をおさえてくれている手に笑い、あと何度か顔を洗う。
「はい」
「ありがとう」
差し出されたタオルで顔を拭き、目を開ければ思った通りの顔があった。
「来てたんですね、ティキさん」
「今さっきな。おはよう」
濡れて張り付いた前髪を指先で払って額に口づける。そのくすぐったさに身をよじりながら朝の挨拶を返した。
「朝ごはん、食べてきました?」
「んーん。作ってくれる?」
もちろん、と答えた唇に小さくキスが落とされる。もう、とむくれた頬が愛らしくてそこへも唇を寄せれば、おとなしく座っててください、と照れた顔で叱責にもならぬ叱責が下された。ティキは肩をすくめてリビングに向かう。
キッチンに向かい、さて何を作ろうかと食材を確認する。先日、ティキが色々と持ち込んでくれたからなんでもあるといえばあるが、あまり待たせてしまうのも悪いし、何より自分もおなかがへっていた。
短時間で作れる簡単なものを、と結局オーブントースターで温めたバケットとスクランブルエッグ、軽く火を通したソーセージにコーヒーというありきたりな朝食を出せば、それでもティキは嬉しそうに笑って平らげた。
「うまい」
「…全部、ちょっと火を通したくらいですよ」
「それでも、オレのために用意してくれたってだけで十分」
にこにこと笑みを浮かべ、テーブルに肘をつき、まだ食事の終わらないこちらをじっと見つめてくる。優しげに細められた目がこそばゆい。幸せだなぁと思うと、コーヒーすらも甘くなる気がした。我ながら単純である。
朝食を終えて二人分の食器を流しで洗っていると、退屈だったのかティキもキッチンに入ってきた。肩に顎を乗せて後ろから手元を覗き込み、まだ? と聞いてくる。
「まだ、です」
「折角オレが来たのに。相手してくんねぇと、拗ねちゃうよ?」
彼が顎で肩をぐりぐりする度、癖のある毛が頬をくすぐった。
「…よく言います。自分なんて、次はいつ来るとも言ってくれないで、いつも気まぐれで」
「守れない約束はしねぇ主義なの」
「はあ」
これ見よがしに溜息を吐いて見せると、ティキの腕がにゅっと前に伸びる。蛇口をひねって水を止められ、びっくりして振り返ると同時に手の中の皿が取り上げられた。
「あ」
「没収。で、お前はこっち」
ひょいと肩に担ぎあげられて、さっさと朝起き出てきたベッドに逆戻り。嘘でしょう、と言う間もなく薄く笑った唇が呼吸ごと言葉を奪った。顔中に、耳元に、首筋に、喉に、鎖骨に。段々と下へ降りていくキスにわずかな抵抗を示すけれど、結局最後は彼に求められるままになってしまうんだ。そんなこと、自分が一番わかっている。
「っは、」
「抵抗しねぇの?」
「………」
答えの代わりに背中に腕を回して抱きしめ返せば、ティキが嬉しそうに喉を鳴らして笑った。
「これ、前言ってたやつ」
「え? …あっ」
もうお昼じゃないか、ごはんどうしよう…。なんて考えていると、目の前でちらちらと何かを振られた。しゃらしゃらと微かに音がする、砂の入った小瓶。手を伸ばせばかわされる。むっと眉を寄せるとティキは笑い、しっかりと手に握らせてくれた。
話の中で、ちょっと「欲しいな」と言っただけなのに、まさか本当に持ってきてくれるなんて。嬉しくなって、寝転がったまま瓶をかざして砂を眺める。
「砂なんて見て、楽しいもんかね」
「ただの砂じゃありません。星の形をしているんです」
「知ってるよ、持ってきたのはオレなんだから」
でもそれってなんかの死骸なんだろ? と風情のないことを言われた。けれど上機嫌は落ち込まない。
それでも綺麗じゃないですか、とにこにこ笑う横顔に目を細め、ティキは後ろから抱きしめる腕の力を強めてむき出しの肩に顔をうずめた。
「な。他にも欲しいもん、ある?」
「どうしたんですか、急に」
「どうも。なんかある?」
いいえ。首を振って、頬を彼の頭に寄せる。
窓の外からは光が差し込む。この部屋には食料も、着替えも、本も、楽器も、画材も、星の砂も、欲しいと思うものは既にすべてあった。白い壁に白い天井。目にまぶしいけれど、黒の彼を映えさせるこの部屋が好きだった。いつ来るともしれない彼をはっきりと見せる、この白い部屋が。
どうした、と聞く彼の頭を両手で抱き込んで、胸元に捕える。名前を呼ぶ声を直接肌に刻み込んで目を閉じた。
「もう、なにもいりません。だから、もっとここへ来てください」
「…かわいいこと言ってくれちゃって」
そう言うけれど、いいよ、とは言ってくれない。守れない約束はしない主義なのだから仕方がない。
「あなたには、きっとわからないんでしょうね」
呟けば、ティキの体がぴくりと反応した。
そう、きっとわかっていない。どれほど私が恐れているか。気まぐれに訪れるあなたが、もしかしたらもう来ないのではないかと一人震える夜を。
あなたは知らない。私がどれだけ、あなたに焦がれているのかを。
「…お前だって、きっとわかってないよ」
呟き、ティキが柔肌に噛みついた。そこから広がる痛みですら愛しい。
「あいしています」
涙が出そうな想いで告げる。ティキが顔を上げた。
「あいしています」
「オレも、あいしてる」
だからはなさないよ。お前を逃がさない。
まじないのように繰り返して顎先に口付け、目を伏せる。触れる肌から感じる互いのぬくもりだけに意識を向けた。こんなにも近い。こんなにも。けれど、どうして胸は満たされない。
入り口もなく、出口もない。あなたしか訪れることの出来ないこの部屋で、私は独り、あなたにただ焦がれ続ける。
「あいして、います」
言葉で縛れたらいい。言葉で全て伝わればいい。私が逃げることを恐れるあなたに、あなたさえいればこの牢獄でさえ楽園に勝るのだと教えられたならいいのに。
そう願いながら何度も囁くけれど、きっと彼には届かない。それがもどかしくもあるけれど、このすれ違いがある限り、きっとあなたは私に執着し続けて、この何もかもある牢獄を与え続けてくれるのだと思うと、そんな一生もいいのかもしれないと思えた。
きっと、私もすでに狂っているんだろう。可笑しくなって笑うと、噛みつくようなキスが降ってきた。
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モノクロ
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女性
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学生
趣味:
ゲーム
自己紹介:
関東圏在住の看護学生。
好きなものはゲーム(特にRPG,SRPG)、漫画(ジャンプ系)、映画(邦画より洋画)。オヤジ好きで声フェチ。
最近は悟りを開き、趣味をオープンにしてます。
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