私は銀魂では近藤さんが一番好きなんだよ!とオフの方でも結構口にしているのですが、同意してくれる人がいまだに一人しか見つかっていません。みんな、落ち着いてみてくれ。確かにストーカーだが、相思相愛になったら彼はきっと家庭を大事にするいい旦那になるぞ。収入もいいと思うし。
と、二次のキャラを旦那にする前提で見ている私は、もはや手遅れだなぁ、としみじみ思う。
以下、小話第六段。近藤さんとラブラブ! している、…はず。
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ひと仕事を終えて屯所に帰ってきた土方は、縁側でタバコをふかしていた。
隊士たちがお互いにねぎらいの声をかけながら、一日の終わりを清々しく迎える夕暮れ。赤い陽に照らされながら、意識を後ろの部屋に向けた。
障子一枚隔てただけのそこからは、物音ひとつ聞こえてこない。周囲の喧騒から取り残されたような重苦しい静寂に、土方は吸いこんだ煙を吐き出した。
と、殺気を感じて後ろに付いていた左手を引っ込める。刹那、先ほどまで手が置いてあった場所に、ずだん、と勢いよく足が下ろされた。舌打ちが聞こえて振り返る。
「こんなとこで何してんですかい、土方さん。通行の邪魔ですぜ」
「後ろに十分スペースあんだろうが。…つか足の裏に何つけてんだてめー」
沖田は、残念そうに持ち上げた足の裏から剣山を取り外して庭に放り投げた。毎度のことながら危ない男だ。思わず顔が引きつる。
「…近藤さんに用か」
「今日のことで、報告がちょっと」
土方は、先ほどから沈黙を守り続ける近藤の部屋を振り返り、溜息を吐いた。
「急ぎじゃねぇなら、後にしとけ」
「いねえんですかい? 近藤さん」
いや。タバコを指に間に挟んでもてあそびながら、土方は苦笑を浮かべる。
「いるにはいるが―――お説教中だ」
ああ、と沖田は納得したように頷いた。
「…凱旋してきた時は、にこにこして『おかえりなさい』なんて言ってた気がしますがねェ」
「堪えてたんだろうよ。あの人は、自分の立場ってのをちゃんとわきまえてる」
内心はどうであれ、ひと仕事を立派に終えて帰ってきた隊士たちを、いつでも笑顔で迎えるのが彼女だ。
真選組局長の傍らにいる者として、不安げな顔は決して見せない。見せてはいけない、と心得ている。
「ま、今回は情報も曖昧なままの無理な御用改めだったしな。結果的には攘夷志士のたくらみを事前に防げたわけだが」
せめてもう少し待ったらどうか、という周囲の提案を押しのけて乗り込んだのは近藤である。それを彼女も知っており、出動前にも土方と一緒に近藤をなだめようとしてくれていた。
そもそも、土方がこんなところにいるのも、今回の件で近藤をたしなめるためだったのである。今回のように情報が少なく危険度の高い戦線では、せめて突出しないで後ろにいてくれ、と。
「…あの人にお灸すえられりゃ、近藤さんもちったァ反省―――」
「してるみたいですねェ。いや、流石は姐さんだ」
は? と振り返った土方は、障子をあけて中を覗き見る沖田に呆れかえった。お前な、と言いつつ自分も中を覗き見てしまうあたり、紆余曲折を経て結ばれたあの二人のことが気にかかっている証拠なのかもしれない。
近藤勲は、本来くつろげる空間であるはずの自室にいながら、呼吸にすら気を使ってしまうような完全な沈黙に包まれた、重苦しい空気の中にいた。行儀よく正座した腿の上で握りこぶしを作る右手には、冷たい汗が滲んでいる。
畳に向けていた視線を、ちらりと持ちあげる。自分と同じようにきちんと正座された膝を覆うのは、淡い色合いの美しい小袖。膝の上でそろえられた手の更に上へ視線を辿っていくと、ぴくりとも表情を動かさない顔が見えた。思わず再び顔をうつむける。
いつもの穏やかな笑みでなければ、眉を吊り上げているわけでもない。ただ無。それが、こんなにも恐ろしいものだとは思いもしなかった。
先刻から続くこの重苦しい空気に、一体どう対処すればいいか、と何度目か思考する近藤の耳に、ふっと息を吸い込む音が聞こえた。顔を上げると、彼女がゆっくりと口を開く。
「…私が、どうして怒っているのか分かりますか」
「え? そりゃあ…」
ぴくり、と彼女の眉が動く。空気が一層張りつめた気がした。
「分かりますか」
「すみません分からないです」
そうでしょうね、と呟いた彼女が一瞬見せた悲しげな表情に近藤は慌てた。傍に寄ってやりたい、と身を乗り出した近藤だが―――それを遮るように、彼女がキッと視線を強める。
「お分かりにならないでしょうねそうでしょうそういう方だって私も分かっているつもりです」
「は、はい」
「寧ろそういうところが素敵だから私は貴方に惹かれたんです」
今、サラッと恥ずかしい告白をされた気がする。が、口をはさめる空気ではないので近藤は大人しく正座していた。
「でも―――不安だし、怖いんです」
彼女はそこまで言い切ると溜息を吐いた。細く吐き出された息が、震えている。
近藤は、今度こそハッとした。よく見れば、彼女の目元が大分赤らんでいる。泣かれてしまう―――いや、泣かせてしまったのかもしれない。
「…傷は、痛みますか」
彼女の視線は近藤の左腕に向けられていた。そこには、過激派の根城に攻め込んだ時、隊士の一人を庇って負った傷がある。首から釣られた腕を見る彼女の泣きそうな顔が辛くて、近藤は懸命に首を横に振って笑顔を浮かべた。
「ぜ、全然痛くありませんよ、こんな傷!」
「馬鹿なこと言わないでください、痛くないわけがないでしょう」
自分で聞いた癖に、と近藤はちょっと思った。口には出さないが。
でも―――そうか。心配をさせてしまったのか。
近藤は苦笑を浮かべた。こんな傷、自分にとっては大したものじゃない。いちいち騒いでいては仕事にならないし、彼女にもこれから慣れていってもらわなければならないけれど。
普段温厚な彼女が、こうして心配して怒ってくれることが、どうしようもなく嬉しい。
「…すまん」
「どうして、謝るんですか」
「心配、かけたみたいだからな」
彼女は眉間にしわを寄せて、ふいと顔を背けた。目に涙をためて、少し顔を赤らめて。
「、心配なんて…するに、決まってますっ」
近藤の体を、電流のように何かが駆け抜けた。
「………」
「だから、今度からはもっと―――、勲さん? 聞いてますか?」
「え、あ、ああ。聞いてる聞いてる…」
近藤が、正座を崩して少し身を乗り出す。
それを見て、傷でも痛むんですか、と心配して寄って来た彼女の手を右手で掴む。
「その、すまん」
「え?」
「抱きしめていいですか」
はい? と首をかしげた彼女の顔がじわじわと赤くなっていく。
「勲さん、突然何言って…!」
「や、なんかこう、抑えきれなくなっちゃって…いい?」
「だ…駄目ですっ」
「えっ、駄目なの?」
ちょっとだけだから、とにじり寄る近藤に、彼女は視線をさまよわせて可愛そうなほど真っ赤になっていた。それが更にそそるというか。
「…俺、ホントにこんな可愛い嫁さんもらっちまっていいもんかなー」
「そんなこと言いながら、この手はなんですかっ」
「えーと、本能には逆らえないというか」
「逆らってください、というか、腕怪我してるのに…!」
「や、そんな無理なことは…するかもしれないけど、なんとかなる!」
「………あれは、止めなくていいのか?」
「俺ァ、馬に蹴られるのはごめんでさァ」
沖田はそう呟いてさっさと立ち去って行った。報告はいいのか、と溜息を吐きながら、障子を閉めると土方もその場を離れることにした。馬に蹴られるのは、同じくごめんなのである。
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終 わ っ と け !
私の近藤さん愛が暴走した結果がこれだよ! なんだろう、もう恥ずかしすぎて言い訳する気も起きない。
好きなものはゲーム(特にRPG,SRPG)、漫画(ジャンプ系)、映画(邦画より洋画)。オヤジ好きで声フェチ。
最近は悟りを開き、趣味をオープンにしてます。