俊彦さんの歌唱力ゆるぎねぇ。そしてやっぱり森川立木のデュオは最強だった。
ところで。たまにアンジェリークやると分かるんだが、私の男(キャラ)の好みって大分変化してきてるようだ。
ゼフェル→チャーリー→アリオス→ヴィクトール(今ここ)
…どんどん、年上好みになっていってるな。
このままいくとオヤジどころかジジキャラ好きに? …いやいやいや、そこまではいかない、多分いかない。…はず。
なんて話はさておいて、小話第五段はまたもDグレ! 口調がつかみ切れず、いまいち似非くさいリンクさんです。
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室内から室外へノックが聞こえてくるなど、奇妙なこともあるものだ―――と手元の本に落としていた視線を持ちあげる。
「…なんですか」
半ば呆れて声をかけると、扉が開けられた。顔をのぞかせたのは、今自分が見張りとして立っている部屋の主である。
やはり貴女か、と呟くと彼女は笑みを浮かべて廊下へ出、扉を静かに閉めた。その合間に聞こえてきた中の喧騒に、少し前に部屋を訪れた黒髪のエクソシストと、自らの監視対象の不仲を思い出した。しかし、その騒がしさに逃げ出して来たのかと思えば、そうでもなさそうだ。リンクは本を閉じ、隣に並んだ彼女に訝しげな視線を向ける。
「廊下は、寒くない?」
「それなりです」
そっけない返答に苦笑して、彼女は手に持ったマグカップをリンクに手渡した。
なんだ、と思いつつとりあえず受け取る。
「…マグカップに紅茶、ですか」
「ティーカップがなくて。ごめんなさい」
「別に、文句が言いたいわけではありませんよ。…これを、私に?」
頷く彼女が、今度は袋入りのシュガーを差し出す。
「ミルクもいるなら、持ってくるけど」
「いえ、結構です。…ありがとうございます」
シュガーの代わりに本を受け取った彼女が、微笑んで首を振る。淹れたての紅茶の香りを楽しみながら、手渡された本が気になっている様子でいる隣の人物を横目でうかがった。
「読んでもかまいませんよ」
「いいの?」
読めるのならば、と呟くリンク。
どういうこと、と首を傾げながら本を開いた彼女がむっと眉を寄せるのを見て少し笑う。それをマグカップを口に押し付けることで誤魔化した。
「…ドイツ語?」
「ええ。読めますか?」
「…読めません」
本を閉じる。その少し寂しそうな横顔に抱かなくてもいいはずの罪悪感が生じた。リンクは溜息を吐く。
「ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ」
「え?」
「ゲーテです。知っていますか?」
「! 知ってる」
途端に、何が嬉しいのか目を細め、改めて本を眺め始めた。単純というか、なんというか。今度は隠しきれずに笑みが浮かんだ。気付いた彼女が少しバツ悪そうにこちらを睨み、本の表紙をめくる。
ページに書かれる著者名と思しき場所を指で辿り、彼女は拙くゲーテの名を呼んだ。ドイツ本来の響きでなく、まして英語なまりを持つわけでもない彼女が紡ぐその名は、なんだか慣れぬ音をしている。
「ハワードは、ゲーテが好きなの?」
そう、彼女が紡ぐと、自分の名さえ聞きなれない響きを持つ。元々、思い入れも多くない名だが、妙な心地だ。決して、不快ではないが。
「好き、というわけではありませんが。手持ちの本が、今はこれしかなかったもので」
「…廊下で本を読むくらいなら、ハワードもお茶会に参加してくれればいいのに」
「あいにくと、仕事中です」
「…お茶会は駄目でも、仕事中に読書はいいの?」
「許容範囲でしょう。―――それに、女性の部屋に踏み入るのも少々気がひけますから」
後半は八割がた冗談だった。彼女の方も、今更? と言ったような微妙な表情を浮かべている。
まあ、確かに―――至極、今更な気遣いだ。当時は、プライバシーなど関係なく彼女の監視を四六時中行っていたのだから。
しかし、リンクとしては二割ほど本気も含んでいるのだ。あの時とは状況が違う。監視者ではなく『ハワード・リンク』として、監視対象としてではない彼女自身と関わっている今と、あの時とでは、部屋に入るという行為でさえ全く違う意味合いを持つものなのだ。少なくとも、リンクの心情においては。
そんなこちらの機微に関して、彼女は気づいていないのだろう。それが寂しくあるような、安心するような。
「あ」
「? どうしました」
「…その。お仕事、だというのは分かっているけれど…あの時って、着替えやお風呂も、その…」
リンクは呆れかえった。それこそ、今更だ。
「…さあ、どうだったでしょうね」
「は、はぐらかさないで」
「―――いいんですか、はっきり言って」
口をつぐんだ彼女の顔が少し赤くなって、俯いた。言わなくていいです、と蚊の鳴くような声で言われてリンクは笑う。紅茶を飲んで一息吐くと、語りかけるというよりは独り言のように呟いた。
「今度は、茶菓子を持参します」
ぱっと顔を上げた彼女が、笑顔を向けた。見なくても分かる、少しはにかむような、彼女独特の優しい笑顔だ。
「…うん。楽しみに、してます」
そう呟かれたところで、部屋に姉弟子がいないことに気付いたアレンが顔をのぞかせた。
彼に促されて中に戻る彼女が小さく手を振る。リンクは手に持ったマグカップを持ちあげて、口元に笑みを浮かべた。
暇ができたら、新作のケーキでも作って持ってきてやろう。と、柄にもなく彼女には絆されまくっているリンクは、紅茶を飲みながらレシピの思索にふけった。
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ラストで落ちをつけるはずでしたが、力尽きてぶっつり切ってしまいました。面目ない。本当は、アレンとか神田とかラビとか出てきて騒がしくする予定だった。それがごっそりなくなったので、ただリンクとナチュラルにいちゃついてる話になりました。…まあ、これはこれで有りですか。
好きなものはゲーム(特にRPG,SRPG)、漫画(ジャンプ系)、映画(邦画より洋画)。オヤジ好きで声フェチ。
最近は悟りを開き、趣味をオープンにしてます。