愚痴るだけ愚痴り、貪るだけ貪って帰っていきました。相変わらず好き勝手にやってくれるヤツだぜ…。
さて、昨日に引き続く小話の第二弾は、TOVの連載主とレイヴンでお送りします!
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「さーむーいー」
いい年をしたおやじが、体を縮めて愚痴っている。その様を尻目に、たき火に薪をくべた。
本来ならばどこかの街にたどり着き、宿でなんら不自由ない夜を明かすはずだった一行は、森の片隅で野宿中である。吹き抜ける夜風が冷たい。
不寝番の相方が、体育座りの体をゆらゆら揺らしている。若干うっとうしい。
「レイヴンさん、その体の動き止めて下さい。ウザいです」
ピタリと動きが止まる。紫の羽織りに手を引っ込めて首を埋めた彼が、恨みがましくこちらを見た。
「…もうちょっと労ってくれたってさー」
「誰のせいで、今日こんな所で野宿してると思ってるんですか?」
「おっさんのせいですごめんなさい」
一息で告げられた謝罪に、思わず溜め息が漏れた。
レイヴンは、ホントにごめんね、ともう一度謝った。別に、謝罪に誠意が感じられなかったから呆れているんじゃない。
くじいたことを隠していた彼の足首は、酷く腫れ上がっていた。すぐに言ってエステルに治してもらえばこんなことにはならなかたのに、と仲間たちはじくじくとレイヴンをいじめあげた。
大丈夫だと思ってたのよ、と彼は言った。けれど、そうではないことを自分は知っている。
彼は戦いの中で、自分を庇って怪我をしたのだ。心当たりはある。そして、そのことで責任を感じることのないようにと言い出さなかった。彼の怪我も、旅の足が遅れたのも、彼ではなく自分のせい。
「わかってますから」
呟くと、レイヴンが目を丸くした。それから、困ったように笑う。こちらも、そんな彼に苦笑を返した。
「足、痛いですか?」
「もう大丈夫。皆、心配しすぎよ」
一応、エステルに治してもらったが、まだ安静が必要だという。少し前に見せてもらった時はまだ腫れて熱をもっていたし、痛いはずなのに。彼はそれを口には出さない。
少しの間、沈黙が下りる。ぱちん、と火が爆ぜる音に促されるように口を開いた。
「…ごめんなさい」
謝ると、彼は笑った。
「謝られるいわれなんて、ぜーんぜんないぜ?」
肩をすくめておどけるレイヴンに、溜め息を吐く。彼は自分に甘すぎて困る。
もっとも、一番困りものなのは、それに悪い気がしていない自分自身だとは思うけれど。
「あー、でもおっさん、寒くて死んじゃいそう。誰か人肌であっためてくれないかなー」
思わずじと目で睨む。いつもならば「セクハラですよ」とたしなめるところではあるが。
「なーんちゃって。冗談…って、あれ? な、なに?」
冗談だよ、とレイヴンが言う前にすっくと立ち上がる。
きょとんとこちらを見上げるレイヴンの隣に腰を下ろすと、彼は少し身を引こうとした。羽織りを掴んで引き止める。
「え、ちょ、なにこの状況」
「寒いんじゃないんですか」
「いや、寒いけど。寒かったけど、おっさん人肌恋しいって言ったけども。年頃の男女が体を寄せ合って暖取るのは、ちょっと不健全…!」
問題ありませんよ、と顔を背けて言う。
「レイヴンさん、年頃じゃありませんから」
「………。いや、そんな揚げ足…!」
ふと、言い募るレイヴンの言葉が止まった。横っ面に痛いほどの視線を感じる。
「…な、なんですか」
慌てて、頬から耳にかけてを手で隠す。冷えた手に触れる部分は大分熱かった。
ふ、と耳元でレイヴンが笑う息遣いを感じた。バツが悪くて顔を背けたままでいると、レイヴンがにやにやした顔で覗き込んできた。
「顔、真っ赤」
「…寒いからです。レイヴンさんだって、真っ赤です」
「ん、そか。ま、寒いから、ね」
頬をおさえていた手を、レイヴンの手が握る。少し冷たくて乾いた、大きな手だった。
あったかいねえ、としみじみ呟くレイヴンの幸せそうな横顔を覗き見て、そうですね、と返す。
気恥ずかしいが、まあいいか、と思えてしまうのは、自分自身この状況が満更でもないからだろう。
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押しには弱いけど、自分が優位に立っていると見るや否や途端に強くなる。
私の中のレイヴンはそんなイメージです。
好きなものはゲーム(特にRPG,SRPG)、漫画(ジャンプ系)、映画(邦画より洋画)。オヤジ好きで声フェチ。
最近は悟りを開き、趣味をオープンにしてます。